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2004/07/12 (月)

最近読んで面白かった本「はなしっぱなし」五十嵐大介/著

ーーーたとえば、「風鈴探偵」ーーー
風鈴をしまい忘れたおうちにそれを知らせるのが仕事。
その方法は口笛を使い、風鈴の言葉で「強く鳴れ」と吹く。
コツが必要で半音どころか10分の1音ずれただけでも違う意味になる。
そしてそれをやった日には必ず「感謝状」の葉書が届く。
差出人は「風鈴の労働環境を改善する会」。
ーーーたとえば「六花」ーーー
病気で学校を休み、家族の留守中に行商の人魚売りがやってきて
「人魚はいらんですか?」と云う。
「1尾50円になりやす。」「いっぴきください」
「もしこいつを見ていて気分が悪くなったらすぐに捨てなくちゃなんねいですよ」
で、だんだん頭がいたくなってきたので近所のどぶ川に捨てた。
ーーーたとえば「ミルラ」ーーー
学校サボって電車に乗って海に来る。海岸で烏の死骸を拾おうとした時、
ミイラを作ることを生業にする男に出逢う。
男は云う「俺は10歳の時、龍の死骸をみた。空気より軽くなって風に乗り空を漂い、
腐らず、固くなることもなく、まるで生きているようにうねりながら
どこまでも流されていくのを見た。」 ーなんて美しい死骸ー
帰りに干物を買う。「干物とミイラって違うんだろか?」の問いに
干物売り曰く「ミイラは昨日の抜け殻だけど干物は明日の血肉になる」
干物はおいしい死骸なのだ。

読み手を引き込みあっさり突き放すちょっと不思議な話が納められてる。
杉浦日向子の「百物語」に似てるかもー。夏の眠れぬ夜なぞにオススメ。
漫画なので視覚で味わってください、この世界。

五十嵐氏『IKKI』で「魔女」連載中。それも好き。

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